最近、エリザベス女王が崩御されました。
とても哀しいニュースでしたが、いち日本国民である僕の印象はとても明るい朗らかな女王。
沈んでいるのは、女王にとっても不本意のような、そう思わせてくれる、今なお元気を与えてくれるようなお方でしたね。
さて、これによりチャールズ元皇太子が王位を継承され、新国王となられました。
チャールズ新国王が国王即位を布告する際、その腕に収まった時計は、今回の記事の主役である「パルミジャーニ・フルリエ」だったそうです。
腕時計好きとしてはとても興味深いニュースです。
※あくまで時計の話であって、エリザベス女王の崩御を指す一文ではありません。
どういった気持ちで、どのようなコレクションから、そしてどんな理由でこのパルミジャーニ・フルリエの「トリック」を選ばれたのでしょうか。
いずれにしても国王即位の場に相応しい、美しくも風格のある時計であることには間違いはありません。
今回この記事でご紹介するのは、同じくパルミジャーニ・フルリエの別モデルです。
ラグジュアリードレスウォッチとも完全なスポーツウォッチともどこか違う。
これまでドレスウォッチを打ち出してきていたパルミジャーニ・フルリエが誇る「デイリーウォッチ」。
その魅力を紐解きます。
◆パルミジャーニ・フルリエ
そもそもこのブランド、どれだけの方がご存知でしょうか。
よほどの時計好きでないと知ってる方は少ないかもしれませんね。
僕なりに知名度が低い要因を考えてみました。
今回はその内容がブランドを物語るかもしれません。
①ブランドとしては歴史が浅い
名だたるスイス時計メゾンの中では、新しいブランドであると言えるでしょう。
設立は1996年。創立者のミシェル・パルミジャーニ氏は1970年代からご自身の時計修理工房を持たれていましたが、ブランドとして発足してからは30年も経っていないというところですね。
もちろん、歴史があれば無条件に素晴らしいとか、逆に新しいと良いとかそういうことではありません。
②代表的モデルがない
誤解の無いよう申し上げておくと、先述の「トリック」や角形時計の「カルパ」など、すでに素晴らしいコレクションを展開しています。
中でも「トリック」は代表的なモデルと言っても過言ではないでしょう。
素晴らしい自社製ムーブメントを搭載し、随所にユニークポイントが散りばめられています。
しかしながら、売上としては少々伸び悩んだようです。
爆発的な人気を誇るほどのきっかけにはならなかったのかもしれません。
③正規販売店が少ない
どうしても目に留まる機会が少ないと、一度見たとしても記憶から消え去りがちです。
国内ではわずかな百貨店や時計専門店でのみの取り扱いのようです。
②、及び③に関しては、「これが理由で知名度が低い」というよりは「知名度が低いからこうなっている」といっても正しいのかもしれません。
しかしそれでも、あらゆるメゾンはいつかどこかで爆発的人気を得たい、そのきっかけを作りたいと思っていることでしょう。
◆トンダGT
そんな中登場したのは「トンダGT」。
2020年のことです。
パルミジャーニ・フルリエは2018年に外部CEOダビデ・トラクスラー氏を招き入れました。
同氏はブルガリやショパールを経験しており、パルミジャーニ・フルリエにおいて変革をもたらしたようです。
ドレスウォッチがお家芸だったパルミジャーニ・フルリエにスポーツモデルを加えるということは、「変革」と呼んでも過言ではないでしょう。そしてそのトンダGTが躍進的な人気を誇り、さらにのちの「トンダPF」という名作に繋がるとするならば……。
「トンダPF」についてはまたの機会に触れるとして、トンダGTに話を戻しましょう。
トンダGTのそのモダンながらも洗練されたデザインは、ディノ・モドロ氏によるもの。
同氏はヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズを産んだ著名なデザイナーです。
このオーヴァーシーズのデザインには、ヴァシュロン・コンスタンタンへのリスペクトが込められており、見た目の美しさだけではない奥深さを感じます。
今回のトンダGTにも、そういったリスペクトが込められた意匠があります。
パルミジャーニ・フルリエの代表作、トリックを見るとその面影を感じることができます。
わかりやすいのはベゼルの模様です。
ローレット加工の呼ばれ、職人の手作業で彫られるとか。
そのため、個体によって加工の量が違う場合もあるそうです。
僕、きらきらしてるベゼルが好きなもので……。
このローレット加工は結構ツボですね。
こういったパルミジャーニ・フルリエ「らしい」意匠を取り入れながらも全く新しい解釈でデザインする。
感嘆せざるを得ませんね。とても素敵なデザインです。
◆トンダGT:ディティール
実際にトンダGTを見てみると、細かな部分で魅力を感じます。
ケース径は42ミリと決して小さくはありませんが、ベゼルの装飾やラグの形状も相まって大きすぎる雰囲気は全くありません。
また視認性も充分。ビッグデイトが日付までしっかり示してくれます。
おもしろいのが、このスモールセコンド。
半円で一本の針の短い方と長い方で1分を測れるようになっています。
文字盤にはクルドパリ模様のギョーシェ彫りが。
みんな大好き裏スケルトン。
ローターは22金の美しさが際立ちます。
ムーブメントはPF044。
45時間のパワーリザーブを備えた自動巻きの機械で、グループ傘下の製造だそうです。
ちなみに10気圧防水。手を洗うときに気にしなくても良さそう。
湾曲したラグの形状。
これが装着感の良さに繋がるのかもしれません。
決して軽いわけではないと思うのですが、ほとんど重みを感じさせません。
ごく自然に日常の相棒にできる。まさにデイリーウォッチたる所以……。
◆まとめとあとがき
実は今回、ブレスレット仕様のモデルが欲しかったんです。
ところが、どこを探しても在庫がありません。小耳に挟んだところ、「パルミジャーニ・フルリエはもうトンダGTをつくらないのではないか」という噂です。
実際、新しいオーダーをストップするように同社は販売店に指示を出しているそうです。
これはもう、ブレスレットモデルどころかトンダGTをあきらめざるを得ないのか……と思っていたところ、カミネ神戸にキャンセルが入って一本だけ残っているとの情報が。
翌朝に駆け付け、このラバーモデルを入手しました。
ちなみにブレスレットは別で発注しようかと思ったのですが、ラバーモデルを見たときにシックでクールな面持ちに心を打たれしばらくこのままで楽しもうと思った次第です。
購入時、夏真っ盛りだったこともありますが……。
いずれはブレスレットも購入したいところですね。
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