繊細な服を纏うということ:SARTORIA SOL LEVANTE ビスポークスーツ

スーツ

オーダーメイドの服はいつだって気持ちを昂らせてくれます。
例外なく。

それらはそれぞれ役割をもち、あらゆる場面で僕の相棒になります。
「高級すぎて使えない」なんてものはひとつもなく、かかった金額の多寡に関わらず遠慮なく使用するのが僕のスタイル。

しかし、〝いつでも気兼ねなく着れる服〟ばかりでワードローブは完成の日を迎えられるでしょうか?
きっと最後には「高級すぎてなかなか着られないような服が足らない!!」と支離滅裂なことを言い出すに決まっています。

このブログを書きながらデスクの後ろにあるワードローブに目をやると、小さな服屋さんほどには服があります。
汎用性ばかり求めるのではなく、唯一無二なキャラクター……そういった存在をそろそろ求めても良いんじゃないか?と自問する今日この頃です。

今回はそんなテーマに沿った繊細な一着。
ワードローブは先述の通り圧迫されていますから、いつも書斎のトルソーに着せられています。
だって繊細なんで。擦れて傷んだりしたら困る。
そんな服です。

◆SARTORIA SOL LEVANTE

ソルレヴァンテについては過去も記事にしています。
ぜひご覧になってみてください。

◆今回の生地

今回のテーマに沿った話を書くには、まず生地について語らなければなりません。

スキャバルの〝EOS〟です。
ギリシャ神話における曙の女神の名を持つこの生地は、super180のウールと上質なシルクの混紡。
その質感は筆舌に尽くしがたいほどラグジュアリーです。

グレーっぽくも見えますが、実際にはネイビー。
ウエイトは220〜230gと、かなり薄い生地です。

うっすらと主張するヘリンボーン……。
オーソドックスな色柄にこの超絶クオリティの生地。
一体どんな服が仕立て上がるのか、楽しみでなりませんでした。

ていうかよく考えたら生地が箱に入ってるのすごいですよね。
それもかなり厳つい箱に……。

◆実際に仕立てあがった服

仮縫い、中縫いを経て、ソルレヴァンテの渡辺氏により仕立て上がった服がこちら。


遠目から見ればヘリンボーンも目立たず、ただのとんでもなく素晴らしいスーツです。
実際のディティールは手縫いのビスポークならではの魅力にあふれています。

どこをみても手仕事が見て取れますが、特筆すべきはラペルの雰囲気。
ハ刺しが若干浮いてます。
こんな服ある!?みたいな衝撃でした。
生地が繊細すぎて明らかにディティールに影響しているわけですから、かなり特別です。
好き嫌いあるでしょうが、これは大いにアジといえるでしょう。
端正なスーツを着たければマシンメイドや、英国調のスーツを仕立てるとことに依頼を出せば良いわけです。

また、ソルレヴァンテはパンツのディティールも素晴らしい。

このバックル、かなり綺麗でした。
形も色艶も完璧。所有するすべてのバックルをこれにしたいくらいです。

ちょっと見えにくいですが、シルエットも素晴らしい。
ちなみにシャツもビスポーク。
こちらも別途記事にします。

◆着用

実際に着てみたイメージです。

ちょっと良すぎる。
このシャツは渡辺氏の奥様でいらっしゃる、Camiceria eriさんによるビスポーク。

シャツを替えてビジネスにも着られるようなスタイルに。
ディティールは凝ってますが、生地の色柄はあくまでスタンダードなので着られるでしょう。
ただし、冒頭にある通り扱いには注意が必要です。

まず、シルクを含むこの生地は極端に水に弱いようです。
「シルクが弱い」と言うより、「super180のウールとシルクの混成、230gのフェザーウェイト」という条件が水に弱いと言った方が正しいかもしれません。

ただならぬ雰囲気もありますから、常にビジネスで使えるかといったらそれは難しいでしょう。
しかしそれこそが「ワードローブで唯一無二のキャラクター」。
今回僕がこの服に感じたのはそんな独自性でした。

◆あとがき

今回はとてもユニークで上質なビスポークスーツの記事でした。
アイロンも難しく、自分ではなかなかかけづらいとのこと。
妙な表現ですが、この扱いづらさが良い。
スキャバルのEOS……気になってもなかなか仕立てられる生地ではありませんが、ご縁があったことに感謝です。
この生地をSARTORIA SOL LEVANTEで仕立てることでうまれるこの表情を大切に、丁寧に着ていきたいと思います。

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