昨年10月に、ロレックス正規店にてデイトナを購入しました。
その後舌の根も乾かぬうちに今回の記事です。
もうこいつはだめかもしれません。
さよならメンズドレス。
今回はドイツの最高峰のひとつ、A.LANGE&SOHNEの腕時計。
その魅力は僕が語るまでもなく多くの時計愛好家にに届いてることでしょう。
ここは僕なりに掘り下げていきましょう。
◆A.LANGE&SOHNE(ランゲ アンド ゾーネ)
A.LANGE&SOHNEの歴史はとても古く、1845年に創業者フェルディナンド・アドルフ・ランゲ(F.Aランゲ)が工房を開業したことからはじまります……と言いたいところですが、A.LANGE&SOHNEの歴史を紐解くともっと遡って語りたくなってしまいます。
とはいえ僕が知ったかぶって語るのも野暮でしょう。
詳しい歴史は公式HPをご覧ください。
公式HPにも記されていますが、F.Aランゲはパリでも修行を積んでいます。
その当時師事した人物……こちらがなんと時計師ヨゼフ・タデウス・ヴィンネル。
あのアブラアン・ルイ・ブレゲの弟子だと言うから驚きです。
時計の歴史を紐解くと頻繁に「ブレゲ」に行き当たります。
それほど偉大な人物、そしてメゾンなのでしょう。
詰まるところ、F.Aランゲの大師匠というわけです。
(歴史を紐解くとわかりますが、おそらくF.Aランゲには師匠と呼ぶにもっとふさわしい人物もいたようです)
F.Aランゲは1875年に若くしてこの世を去りますが、息子たちが跡を継ぎます。
優秀なその跡取り、〝リヒャルト・ランゲ〟は次男エミールと共にその才能を存分に発揮したようです。
ところが19世紀に入り、第二次世界大戦勃発。
〝ランゲの子どもたち〟は時代の荒波に飲まれてしまいました。
工房は焼失し、ブランドは他社に統合されその名は消え去りました。
しかしこれは結末のわかりきった物語です。
A.LANGE&SOHNEは、1995年、創業者の曾孫〝ウォルター・ランゲ〟により復活劇を演じ切ります。
まさにランゲとその子どもたちのストーリーは、今も脈々と続いています。
◆1815 アップ/ダウン
「1815」とは、創業者F.Aランゲの生まれ年です。
特徴的なレールウェイモチーフの分目盛り、アラビアインデックス、そして青く焼かれた針。
それら1815の特徴にパワーリザーブを加えたのがこのモデルです。
ケース寸法
ケース直径: 39 mm
厚さ: 8.7 mm
巻上げ機構
手巻き
パワーリザーブ
72 時間
この絶妙ともとれるサイズ感を思う存分に活かした文字盤。
ふたつのサブダイヤルが完璧な調和を見せてくれます。
昨今、腕時計の所謂デカアツブームは終わりを迎えてしばらく経ちます。
ドレスウォッチといえば35㎜〜39㎜程度が主流となりました。
この1815 アップ/ダウンは、ドレスウォッチではあるもののカジュアルな意匠を携えています。
こうなると小ぶりすぎるサイズ感よりは、若干の主張が欲しいところ。
実際、2013年まで発売されていた前身モデルは約36㎜でしたが、レパートリーを考えるとこちらに軍配があがりました。
しかしあれも相当によかった。
カラトラバが手持ちになければ選んでいたかもしれません。
A.LANGE&SOHNEの時計は裏側も驚異的な魅力です。
4分の3プレートをくり抜くかのように歯車が配置されています。
手巻き機構を巻き上げると、確かに歯車が動いていく様子が見られます。
存在感のあるチラネジ付きテンプもマニアにはたまらない仕様。
僕にとってはこの彫刻の方が魅力的に思えます。
袖から覗く様子も美しい。
このサイズ感ならではの満足感があります。
僕は小さい時計も大好きですが、役割の違いがあります。
この時計にはドレス〜カジュアルをサポートする役目があるように感じます。
また、シンプルな3針ではなくパワーリザーブ付きという点、そしてレールウェイ目盛りもそのバランスの良さを手伝っています。
角度によって様々な、そしてユニークな表情を見せるこの文字盤はシルバー無垢製。
随所にこだわりが見受けられます。
そのこだわりすべてが調和してつくりだす雰囲気は、どこか静謐な面持ち。
カジュアルな意匠を取り入れながらも揺るぎないコンセプトを物語っています。
そこに佇むだけで圧倒的なラグジュアリー。それでも多くを語らない物静かさは、こちらから歩み寄ってはじめて深淵に引き摺り込まれるのかもしれません。
どこまで掘り下げても次々と現れる、魅力溢れるディティールの数々……相反してシンプルなルックスは、見れば見るほど夢中にさせられます。
◆あとがき
A.LANGE&SOHNEの時計はすべて〝2度組み〟されると伺いました。
一度組み上げ精度などを確認したのちバラし、再度組み上げるとか。
そんなことをやっているなんて見た目では当然わかりませんが、かのF.Aランゲ氏の言葉に
人の高貴さはその行いにあり
との名言が残っています。
目に見えないものにこそ高貴な魂は宿る。
それはドイツのものづくりに一貫してみられる矜持の一端かもしれません。
未熟な僕がその叡智に触れられるとは、腕時計とはかくもおもしろい。
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